シミュレーションゲームの世界

−社会科・公民科等での活用研究−

長崎大学教育学部(社会科教育)福田正弘

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1.研究概要

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研究課題名

 

多様な社会のあり方を追求するシミュレーション教材の開発と実践

 

 

研究目的(概要)

 実社会の有り様を反映して、多様な在り方が可能であることを体験的に理解できるシミュレーション教材を開発する。そして、開発した教材を用いて、単一の在り方しか認めない子どもの認識を揺さぶり、子どもがその偏狭な認識を変革し発展させていく筋道を実証的に明らかにする。シミュレーション教材は学習者に疑似体験をさせつつ、モデルに組み込まれた概念や法則をつかませる優れた教材である。しかし、それらの多くは単一の概念や法則を習得させるに留まっており、余りにも単純化して社会を見ることにつながっている。社会の多様性に気付かせるようにしたい。

 

@研究の学術的背景

今日、グローバリゼーションが進行する中で、社会の在り方や人々の価値観が単一化し、画一的な社会になってきていると指摘されている。特に、国境を越えて競争する企業はその傾向が強く、同じような商品を類似した生産方式で生産し、よく似た販売方式で販売している。一見どの企業も同じように見え、こうした一面的な見えが子どもの企業に対する見方を単一的で固定的なものにしていると考えられる。

つまり、企業は同一の収益構造を持っており、どの企業もより安く作り、より安く、より多く売るという戦略を採っているとして単一化して見る傾向が強いが、実際市場にはこうした企業ばかりではなく、高く少量を売るという戦略で市場から支持されている企業も存在し、多様な戦略を採る企業がうまく棲み分けている状況がある。この棲み分けの論理を子どもに気付かせ、社会における多様な在り方をつかませたい。

一方、シミュレーション教材は体験的に概念や法則を獲得させるのに有利な教材である。このことはこれまで多くの実証事例で証明済みである。しかしながら、その多くはシミュレーション結果として唯一の正解を用意しておき、単一の概念や法則をつかませるものであることが多い。また、複数の解が成り立ったとしても、それは単にシミュレーションの条件設定の曖昧さに依るものであったりする。いずれにせよ、厳格な条件設定の中で、複数の解が成り立ち、それらが共存しうるという社会シミュレーション教材は存在しない。

申請者はこれまで経済活動における意思決定を事例にシミュレーション教材を開発し、その有効性の実証的研究を行ってきた。近年では、個別的利益と社会的利益をバランスさせる環境を主題とした経営シミュレーション教材を開発している。今回、これまで蓄積してきた開発技法を駆使して、複数戦略を持つ企業が市場に棲み分けを図るシミュレーション教材を開発する。

 

A研究の内容

 本研究は、(1)シミュレーション教材の開発と(2)その有効性の検証の二つが主な内容である。以下この二つについて詳述する。

 (1)シミュレーション教材の開発

 ○既存のシミュレーション教材の収集と分析

 既存のシミュレーション教材を収集し、研究主題である多様な社会の在り方の観点からその内容を分析し、多様な社会の在り方を理解させるシミュレーション・モデルの特徴を明らかにする。なお、ここでは経済的題材を取り扱った教材を収集・分析対象とし、異文化理解などその他の分野の内容を題材とするものについては今後の検討対象とする。

 ○シミュレーション化する事象の事例研究

 教材として取り上げる事例を検討し、学習者が疑似体験する事象や場面と、そこで求められる意思決定内容を決定する。そして、その専門学的基礎付けを行い、教育内容を確定する。

 ○シミュレーション・モデルの構築と教材作り

 確定した教育内容をシミュレーションによる意思決定を通じて獲得できるように、シミュレーションの文脈化を図り、教材として作り込んでいく。

 (2)シミュレーション教材の有効性の検証

 ○シミュレーション教材の試行とチューニング

 開発したシミュレーション教材を実験的に試行し、学習者の意思決定結果を分析し、シミュレーションのパラメーターなど条件設定を検討する。検討結果を生かし、教材を改善していく。ここでは被験者として、大学生(教育学部学生及び経済学部学生)を予定している。

 ○中学校・高等学校での実証実験と最終改善

 チューニング済みの教材を、協力校において実証実験を実施する。生徒の意思決定結果を分析し、教材としての妥当性を最終的に判断する。必要な改善点があれば改善する。その他、普及に向けて補助資料等の整備を行う。

WEBでの発信と本格的普及

 WEB上に専用サイトを開設し、開発教材の利用に関して解説する。また、利用ユーザー管理も同時に行い、教材の利用基盤を確立する。これらの過程を経て、教材の利用普及を促進していく。

 

B研究の特色・独創性・予想される結果・意義

 

本研究は、これまで開発され利用されてきた社会科シミュレーション教材の一面性を越え、学習者が多様な社会の在り方を自らの意思決定を通じて学べる点で独創性を持つ。以下、本研究の特色を挙げる。

1)模擬的体験で生き生きした学習ができる教材

 シミュレーション教材の特徴である模擬的体験による活動的学習によって生き生きとした学習ができる。実際にリアルな意思決定を可能にする構成を取ることで、学習者は市場における現実感を味わうことができる。

2)多様な社会の在り方を学べるシミュレーション教材

 本教材では、学習者はシミュレーションを通じて、想定された市場において複数の経営戦略が成り立ち、それらが共存しうることを学ぶ。これは単一の概念・法則を掴ませるこれまでのシミュレーション教材を越えて、多様な社会の在り方が存在することに気付かせることになる。

3)協同学習による社会的意思決定を学べる教材

 シミュレーションへは個人でも参加可能であるが、1チーム2〜3人のチームでの参加を想定しており、1クラス10数チームで市場における企業をシミュレートする。他チームの動向を見極めつつ、チーム内で協力して意思決定を行う協同学習が前提となっている。また、学習後の振り返りも協同して行い、データ処理・文書作成・発表資料作成・発表など言語活動も十分である。

4WEB等で確実な利用普及を図るシミュレーション教材

 開発教材はWEBを通じて配信されるので、ユーザー登録をすれば世界のどこからでも利用可能である。シミュレーション自体への参加も国内外の学習者が同時に行うことができ、教室内で協同学習に留まらず、国際的な協同学習も可能である。また、新たに製品パッケージを作る必要はないので極めて安価に利用でき、確実な利用普及が見込める。

 

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2.ゲームモデル

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ここでは、今回開発する"Restaurant"ゲームのモデルを簡略化して図示します。
このゲームでは、多層市場モデルを設定しました。


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3.ゲームページ

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ここでは、ゲームの内容・方法・実行環境・参加方法などについて略述します。
詳細については、下記メールアドレスにメール下さい。

0)ゲームの名前
Restaurant

1) ゲームの内容
10軒ほどのレストランが、料理の価格、品質、宣伝によって顧客の獲得競争をしながら、累積営業利益の大きさを競うゲーム。マーケティングの4Pのうち、3P(Price,Product,Promotion)についてその基本を活動的に学びます。

2) ゲームの方法
3人程度(それ以下でも可)のチームを10程度作り、レストランとして競わせる。インターネット上で仮想の市場が形成されており、各レストランは、料理の価格と材料費、広告費を決定し、PCに入力する。入力データはサーバで集計・計算され、個々のレストランの来客数が決定され、営業成績が判明する。各レストランは、この結果を見て、次期の経営内容について考えていく。

3) 実行環境
チーム数+1(教師用)台分のインターネットに接続されたPCまたはモバイル端末
プロジェクタ、スクリーン
教室はネット環境の整った部屋ならどこでもよい。但し、ゲーム中は結構やかましくなることもあるため、その点での配慮ができる部屋がよい。
机の配置は講義式の孤立的な配置ではなく、チームでディスカッションできる配置がよい。
ゲームのシナリオ
ワークシート
概念チェックテスト(必要に応じて)
電卓または表計算ソフト(意思決定時の計算のため)
使用システム=YBG(yokohama business game:横浜国立大学経営学部が提供するビジネスゲームシステム)

4) 参加方法
ユーザー登録が必要です。
登録についてのお問い合わせは下記メールアドレスにメール下さい。

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4.参考情報

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ここでは、本研究に関連する私自身の文書(web上で閲覧可能なもの)を紹介します。参考になさって下さい。
なお、以下に掲載するもののうち、長崎大学発行のものは、長崎大学学術成果リポジトリNAOSITEからダウンロードできます。

・福田正弘(2005).「ビジネスゲームによる数理的社会認識の育成−中学校社会科における『ベーカリーゲーム』の場合−」,『長崎大学教育学部紀要教科教育学』No.45,1-13.
・福田正弘(2006).「ビジネスゲームによる数理的社会認識の育成(2)―中学校経済未学習生徒のゲームパフォーマンス−」,『長崎大学教育学部紀要教科教育学』No.46,17-25.
・福田正弘(2007).「ゲーム作りを通して学ぶ社会科授業構成」,『長崎大学教育学部附属教育実践総合センター紀要』No.6,93-102.
・福田正弘(2008).「離島地域の中学校におけるビジネスゲームの導入に関する基礎的研究」,『長崎大学教育学部紀要教科教育学』No.48,1-9.
・福田正弘(2013),「市場の多様化に応えるビジネスゲームの開発-多様な企業戦略を可能にするゲーミングモデルの構築」,『長崎大学教育学部附属教育実践総合センター紀要』No.12,107-116.
・福田正弘(2014),「市場の多様化に応えるビジネスゲームの開発(2)-多層市場モデルゲームの検証実験」,『長崎大学教育学部附属教育実践総合センター紀要』No.13,109-118.
・福田正弘・佐藤弘章(2014),「ビジネスゲームを用いた中学校社会科経済学習-経営シミュレーションゲーム『Restaurant』の実践」,『長崎大学教育学部附属教育実践総合センター紀要』No.13,31-41.

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5.学会発表資料

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学会発表資料(ppt)を紹介します。参考になさって下さい。

全国社会科教育学会第62回研究大会
日本社会科教育学会第63回研究大会

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